事業について

第7期 活動実績報告(2020年10月〜2021年9月)


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概要

 コロナの影響を受け、人が集まって行う講演会・相談会は、オンラインに移行しての開催が増えました。NPO法人ICT救助隊のICTセミナー講師も、前年度は都内での集合研修が中心でしたが、基本はオンライン研修になりました。
 藤沢市役所を借りてCSIと合同で行っていたコミュニケーション相談会もオンライン対応が基本となり、数件だけが対面での対応となりました。今後もさまざまな活動がオンライン中心になっていくと思います。オンラインの良さは離れた場所とでも接点を広げられることです。出会えなかった人たちとの出会いが広がると前向きに考えて今後の活動を進めていきたいですね。

アクセシビリティ

 コミュニケーション場面でのICTの活用場面において「アクセシビリティ」がキーワードとして浮上してきました。分科会で議論したように、世間では「アクセシビリティ機器」のことと認識する人もまだ多いと思います。機器を使うことが目的になってしまっては本末転倒になりかねません。
 「選べる自由・選ばない自由。一緒に考えること。」そういったアクセシビリティという考え方をみなさんと共有したいと思います。作成した「アクセシビリティってなんだろう?」という動画は既にネット上でも公開しましたが、今後、さらにわかりやすい資料を作成して公開していきたいと思います。



講演会

2021年09月 重い障害のある方々のACP(人生会議)について学ぶ
東京都重症心身障害児(者)を守る会・両親の集い(月例会)

 東京都立東部療育センター副院長の益山龍雄先生の「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)人生会議について学ぼう」のご講演、重症心身障害児者のACPに特別なことなどを、さまざまなエピソードを絡めながらわかりやすく教えていただきました。
 高橋は前座として「コミュニケーション支援の一助となるICT機
益山先生、星さんと器利用場面紹介」と題して「ICTは機械ではなく機会」のお話しをしました。「決めつけない・そして考える」ことをいつも講演会でお話ししますが、繰り返し話し合うことが大切なACPにもつながることと思います。
 講演資料です。 https://www.yui.fi/lib/doc/20210916Mamorukai.pdf

学会での発表

2020年11月 日本難病医療ネットワーク学会

「導入しやすいコミュニケーション機器とは?」

 仮に簡単に使える機器を手にしたとしても、話したい気持ちにならない、話したい相手がいない、話を聞いてくれる人がいないのでは、機器を導入した意味がありません。
 「文字盤で言葉をとる時間がないので、はい・いいえだけでも教えて」と言われてしまった時、話したい気持ちは失われてしまっているかもしれないことを、私たちは考える必要があります。
 コミュニケーションは、用事を伝えることではなく、心を通わせること。コミュニケーション機器は、機械ではなく、機会。そう考えています。

その他の活動

さぁ楽しいiPadライフをはじめよう〜NPO法人 ICT救助隊〜
 昨年度に引き続き、NPO法人ICT救助隊との難病者へのコミュニケーション支援講座のサポートを行いました。3ヶ月に渡ってiPadとスイッチ類を貸し出し、毎月オンラインで講座を行う方式で2セッション開催しました。
 講座で使用するテキストの制作も担当し、3〜5章は研究所で執筆しました。テキストは無償でICT救助隊のページからPDFを配布しているほか、印刷物の販売もしています。
 ICT救助隊のホームページ: https://www.rescue-ict.com/

「言いたいことを言おう」プロジェクト〜中原養護学校〜
 今年の重度障害のある子どもたちの声を聞くこのプロジェクトは、川崎市中原養護学校中学部の先生たちと取り組んでいます。活動は2022年3月まで続きます。
 まず、日常の活動・コミュニケーションにおけるiPadの活用方法についてセミナーを開催しました。その後、研究所からコミュニケーションアプリ一式を含むiPadを学校に貸し出し、活動に役立てる工夫を先生方が取り組んでいます。発話が難しい子どもたちが、iPadやアプリを使ってどのように自分の意見を伝えるか、そこに取り組む先生方の思いや考えも記録に残すことが今回のプロジェクトの目的です。

特別支援学校 ICT外部専門家
 東京都立大泉特別支援学校、東京都立小平特別支援学校武蔵分教室でのICT外部専門家の活動を今年もしています。
 武蔵分教室の女子生徒は、中3の時からアドバイスをしています。わずかに動く指先は最初はスイッチ操作はできなかったのですが、担任の先生を介した「先生スイッチ」でiPad上のカードを選択することから始めました。卒業式には卒業生代表挨拶を指伝話で行いました。高校生になってからは、iPadのスイッチコントロール操作をおぼえました。
 関係者の中には、彼女が自分の意思でiPadを操作するのは無理だろうと決めつけてしまっていた人もいたかもしれませんが、自分でやりたいと思う気持ちは強く持っている訳ですから、それをいかに引き出すかを工夫するのは周りの人の役目です。彼女が自分の意思で画面上のカードを選択するようになってきて、周りの人の理解にも変化が起きています。今後が楽しみです。

システムデザインラボとのスイッチ試作
 システムデザインラボの杉本さんに協力を仰ぎ、手を揺らす操作がスイッチ入力となる加速度センサーを利用したスイッチを試作しました。視力が弱く呼吸器をつけことばでの会話ができず身体が少しだけ動かせる小学生は、ピエゾスイッチを使い、手を少し上に上げるような動作でスイッチ操作をしています。学校で手の消毒をする際にピエゾスイッチが取り外されると、再度感度の良い場所に設置してもらうのが難しくて使えなくなってしまいます。
 そこで腕時計型のスイッチにすることで、装着が簡単になると考えました。腕に鈴をつけたようなイメージということで、鈴スイッチと呼んでいます。
 もう1つは、重症ギランバレー症候群から回復中の方が、手の指は自由にならないが手自体を動かすことができつつあるので、手を載せて動かすジョイスティックマウスを試作しました。
 電動車椅子のジョイスティック部分の部品を再利用したもので、量産はできませんが、iPadやMacBookに接続してポインタを動かすことができます。課題はクリック操作で、滞留タップを使うのがまだ難しく、できれば別なボタン・スイッチ操作でクリック操作を行うのが良さそうです。OS側でポインタの速度の変更や滞留コントロールの設定を行う機能がありますが、このジョイスティックマウス側にもスイッチで設定を行うようになっていました。

新理事会メンバー

 2021年5月から、理事会メンバーが新しくなりました。
 高橋宜盟(代表理事)、二階堂静(理事・作業療法士)、松木るりこ(理事・言語聴覚士)
 インターネットドメインを変更しました。 https://www.yuilab.net/

第8期 活動計画(2021年10月〜2022年9月)


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はじめに

 東京オリンピック・パラリンピックが終わり、誰もが等しく、病気や障害によって差別されることなく社会にしていこうという意識は高まったと思います。一方で、「健常者」が「障害者」を助けなくてはいけないという思いの強さが、悪意のない差別を生み出してしまうこともあると思います。
 今後、アクセシビリティについての議論が高まると思いますが、一般的にはアクセシビリティというと障害者に対する配慮のことと考えらえているようです。
 私たちが考えるアクセシビリティとは、誰もが選択肢を手に入れるためにする考え方です。そしてその選択肢の中から自分の意思で選ぶ、それが自由です。そして選ぶだけでなく、選ばないという自由もあることも大切に考えなければならないです。さらにそれを一緒に考えること、ここが重要な点です。一方的に提供するのではなく、一緒に作り上げていくという考え方が、アクセシビリティの基本だと思います。
 新しい第8期は、アクセシビリティという概念を多くの人と共有する1年にしたいと思います。

定款の変更

 私たちの活動をより明確にするために、定款に掲げる団体の目的を次のように変更します。
  (1)コミュニケーション・アクセシビリティおよび福祉に関する調査研究事業
  (2)コミュニケーション・アクセシビリティおよび福祉に関する教育関連事業
  (3)前各号に掲げる事業に附帯又は関連する事業

主な活動予定

講習会・講演会
 NPO法人ICT救助隊とのコラボ企画「さぁ楽しいiPadライフをはじめよう」を継続して行います。貸し出し用のiPadに加え、家電操作のNature Remo使いながら家の家電をiPadから操作する勉強会(オンライン)も企画されています。

アクセシビリティ相談会
 コミュニケーション相談会は、アクセシビリティ相談会として継続して随時行います。概念はわかったが具体的に何をすればよいかがわからないという方も多いので、個別に受ける相談の内容をレポートし、共有したいと思います。

「言いたいことを言おう」プロジェクト〜中原養護学校〜
 2022年3月までのプロジェクトは、終了時に先生方や保護者との座談会などを行い、活動内容遠冊子や動画にまとめる予定です。

特別支援学校 ICT外部専門家
 東京都立大泉特別支援学校、東京都立小平特別支援学校武蔵分教室でのICT外部専門家の活動は、2022年3月までの契約です。引き続き更新されるかどうかは今後の協議となります。

アクセシビリティの本の出版
 アクセシビリティの本を共著で出版予定で準備中です。当初の出版予定から1年遅れていますが、期待が高まっています。

研究員の活動発表
 具体的な場所は決めていませんが、研究員の活動をセミナー等で発表する機会を設けたいと思います。

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